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2019年4月21日 (日)

新刊2冊

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4月に購入した新刊2冊をご紹介。

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「ロケットが来た」(鈴木翔遥著/文芸社/2017年)

1975年に打ち上げられた日本初の液体燃料ロケットNロケットと技術試験衛星きくの開発秘話と、当時の著者の青春ドラマです。おそらく著者の回顧録だとは思うのですが、フィクションの体裁を取っており登場人物や企業名は宇宙開発事業団とNHK以外は仮名になっています。

Nロケットは米マクドネル・ダグラス社のソア・デルタロケットの技術提供で現在では「肝心な部分はブラックボックスで何も教えてくれなかった」というマイナスの面ばかり語られていますが(詳細↓)

ロケット開発、七転び八起き(By的川先生)

1978年の宇宙本、第2報

実は凄かった日本の宇宙開発

この本を読むと、「いやぁ、これはアメリカから技術導入しなかったら、どうにもならなかったわ!」と思います。確かに作中でも「ターボポンプは触らせてくれない」とありましたが、機密ではない部分、配管やノズルやタンクについてはアメリカの技術者は手取り足取り親切丁寧に教えてくれたし(まあお客様ですから)、その機密ではない部分でさえも当時の日本の技術では手も足も出なかったのは事実。

当時、日本政府は1970年までに技術試験衛星を静止軌道に乗せる事をNASDAに要求していましたが、「カネもヒトも時間も技術も足りない。絶対に無理だと思った!」とNHKコズミックフロントで答えています。その一方、気象衛星を欲しがる気象庁や放送衛星を欲しがるNHKや通信衛星を欲しがるKDDや電電公社(現NTT)などユーザーからは「一刻も早く衛星を打ち上げてくれ!」と矢の催促(実際に技術試験衛星きく2号を静止軌道に乗せたのは7年遅れの1977年)。これ以上ユーザーを待たせたら日本の宇宙開発そのものが打ち切りになり、イギリスのように人工衛星を打ち上げておきながらも、放棄し衛星打ち上げを外注する国になってしまう(参考資料↓イギリス最初で最後の人工衛星「プロスペロ」打ち上げロケット、ブラックアロー。1971年10月28日打ち上げ)。

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(引用文献:1978年の宇宙本、第2報

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(引用文献:実は凄かった日本の宇宙開発 ) え?何で炎が無いの?UFO?と小学1年生の時この写真見て驚きました。酸化剤に液体酸素じゃなく過酸化水素を用いていたので噴煙が出なかったそうです。

「これが失敗したら日本の航空宇宙産業は終わりだ。」という崖っぷち感は現在の国産ジェット旅客機MRーJの立場に似ていますね。作中でもYS-11の設計者がNロケット開発に参加してるのはそれを匂わせているのかな?。

ブラックボックスには厳しかったアメリカ側ですが、技術導入にはとても熱心で、休日にアメリカの技術者の家に招かれて交流するエピソードとかは心温まる場面です。国と国との思惑とは別に、ロケットを愛する技術者たちの友情と情熱には国境は無いと思いました。

糸川先生率いる東大宇宙研(ISAS)はアメリカからの技術導入には反対の立場で、「ISASも液体燃料ロケットの基礎実験はしている。うちの研究データを渡すからアメリカからの技術導入はやめてくれと」いう立場だった(それで糸川先生はアメリカから睨まれ辞任に追い込まれた)んですが、NASDAも嬉々としてアメリカの技術導入を受けた訳ではなく苦汁の選択だったのがわかります。秋葉鐐二郎氏のインタビューでも糸川先生率いるISASが内之浦から人工衛星を打ち上げようとするとアメリカの軍事顧問団が視察に来るようになったと回想しています。

>アメリカは国際関係のバランスから言って日本がこのようなロケット技術を持つことに、まあよしとしていたと思います。欧州ではそうはいかなく、どんどんその芽を摘み取られていたのですよ。この差はえらい違いですね(引用)。

遠まわしにイギリスが独自の衛星打ち上げを放棄せざるを得なかったのはアメリカの圧力だったことを示唆してます。イギリスは戦勝国の恩恵で国連の常任理事国になれましたけど、戦後のイギリスの航空宇宙産業や自動車産業の斜陽化を見ると、第2次世界大戦最大の敗者はイギリス・オランダだったんじゃないかと思う。日本・ドイツは戦争には負けたけど「経済封鎖は止めてくれ!ちゃんと料金は払うんだから自由貿易を認めてくれ!」「東南アジアの植民地支配は止めてくれ!」という日本の言い分は通ったんですから。

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NHKプロジェクトXより。五代富文氏もNHKのインタビューで「技術導入は好かない訳ですよ。」と本意では無かったことを認めています。

アメリカは当時でもすでに自動車を始め日本との膨大な貿易赤字に頭を抱えていましたし、日本人の国民世論でも弾道ミサイル開発の意思は無いとはわかっていても(現在の某国の将軍様とは違って)、お人よしのISASがユーゴスラビアに輸出したカッパロケットの生産設備は、すっかりミサイル製造に転用され東側に流れてしまい、「これ以上日本にロケットの独自開発をさせたら危険だ。アメリカの監視下に置かなければ」という危機意識もあったんです。

このNロケットの経験が有ってこその現在のH-2AロケットとH-2Bロケットの成功があるんです。むしろ技術導入のおかげで近道になったとアメリカには感謝する必要もあると考えます。イギリスみたいに完膚なまでにロケットの独自開発を中止に追い込みはされなかった訳ですし。

 

そして、もう一冊。冬コミデビュー目指して光学本を買いあさっています。

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しっかり学べる光学設計の基礎知識(牛山善太著/日刊工業出版社/2017年)

ズームレンズの設計法はほとんど書かれていないので、直接引用できる資料ではない(そもそも数式中心の本なので私には歯が立たないw)ですが、収差やパワー配分とか、ズームレンズを語るに欠かせない基礎理論を調べるため購入しました。

この本読んで安心したのがこれ

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以前、私のサイトに対して「増田さんは凸凹張り合わせの色消しレンズのことをダブレットと呼んでいますが、それはダブルメニスカスであってダブレットとは絞りを挟んで前後に同じ形状の凸レンズを対称型に配する構成の事を言うんじゃないですか?」という突っ込みの書き込みがあったので?「え?そうなんですか?中川治平先生の著書(参照:« 資料本購入 )では色消しレンズの事を中川先生はダブレットと呼称していますよ?」と返答して沙汰止みになった経験があったんですが、この本でも色消しレンズのことをダブレットとちゃんと呼称している。良かった~!やっぱり正しいじゃん!自分!(調子に乗るな)!

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反論するときはエビデンス(根拠)を明記せよ!学生時代からの教訓です。この本買って良かった~

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コメント

光学設計はさっぱり分かりません^^;
ダプレットって2枚レンズのことなんでしょうね?
トリプレットは3枚レンズだしぃ。
ハイペルゴンの風車が回るところ見てみたいな^^

ありがとうございます。
確かに「複玉」という名称に対する解釈の違いは現在もあるようです(参照↓)。
https://kotobank.jp/word/%E8%A4%87%E7%8E%89-617177
「2枚以上のレンズを使った写真レンズ」という解釈もあれば、質問されてきた方の仰る通りの

「カメラの絞りの前後に前玉と後玉とを配置した撮影レンズ。前玉と後玉とがそれぞれ収差をとるため屈折率のちがうはり合わせレンズであることもある。」
と言う説明もありました。2番目の解説の前半が、質問者様がおっしゃる「狭議」の「複玉」で、後半は私が自分のサイトで書いた2枚張り合わせの「色消しレンズ」の事を見事に説明しきっています。
とりあえず、2枚のレンズを使ってさえいれば「複玉」であって、わたしのサイトで言う「ダブレット」も質問者様の言う左右対称型の2枚レンズ(そう、クリ様のおっしゃるハイパーゴンです)も広義の「複玉」に入ると言う事で宜しいのではないでしょうか?
(PS:正直言うと、自分の言っている事がウソではないと証明できて内心ほっとしてます)

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